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ハリセンボンとは

ハリセンボンは、フグ目ハリセンボン科に属し、世界中の温帯・亜熱帯に生息するフグです。
日本では、北海道から沖縄まで、各所で採集されています。
黒潮にのってやってくるようで、伊豆でも四国でも西日本でもたくさん見ることができます。
近年では、日本海での大量漂着なども見られます。水面にプカプカ浮いていたり、岩陰にひっそり寝ていたりします。
大きなヒレの割に、泳ぐスピードは決して速くなく、必死に逃げてしまわなければ、採るのは比較的簡単です。
体中がハリで覆われていますが、普段は大抵ハリは寝ています。 機嫌や体調が悪い時、またはほんの拍子でふくらみます。
水を吸い込んでふくらむので、その前にさっとすくいあげちゃうと、ほとんど膨らむことはできなくなります。
成魚(全長40cm程度・重量5~600g)がふくらむと、さらに水の重さも加わり、素手ではとても持つことはできません。
沖縄ではアバサーと呼ばれ、食用にされます。フグの毒はありません。
体の模様は、茶色い大きな斑点と、黒い細かい水玉の2部構成です。成魚のお腹は真っ白です。
ちなみにハリは実際には1000本もなく、300から500位だそうです。
怒ったりした場合、ギーギーと鳴くこともあります。どうやら人を識別するようで、大変飼い主になつきます。
なお、ハリセンボンの雌雄は、明らかに産卵間近の雌でないかぎり、識別は困難だそうです。
寿命については定かではありませんが、水槽での長期飼育は3~5年位までしか聞いたことがありません。
年をとると、歯の力が衰え、硬いものを割ることが出来なくなります。
顔も目の周りに小じわが増えてきたり、色ツヤも悪くなってきます。いかにも「お年寄り」になるのです。

ハリセンボン科の仲間たち

harisen1 harisen2
ハリセンボン
色は個体差があるが、水槽で長く飼育していて状態が良いと、黄色くなっていくような気がします。
ヒレは無色。黒目はグリーンだったりブルーだったりもします。
hitodura1 dura2
ヒトヅラハリセンボン
茶色のぶちが白く縁取りされているのが特徴。目のぶちも下に伸びています。
ハリセンボンよりもかなり大型になり、沖縄で食用にされているのはこの種がほとんどのような感じ。
nezumihugu1 nezumihugu22
ネズミフグ
顔が四角っぽく、黒い点が多く、かなり大型になる。ハリは長め、黒目が大きい。
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イシガキフグ
表情はネズミフグに似るが、ハリが短く点が少ない。ハリというより、トゲって感じかな。
meitaisigakihugu1 meitaisigakihugu2
メイタイシガキフグ
ハリセンボンよりも温和で内気な性格。針は常に立っている。
おとなしいので混泳には注意が必要。
pine pine2
ポーキュパインフィッシュ(Porcupine Fish/Allomycterus pilatus)
ニュージーランド沿岸の水深70~270mと深いところに住む種。ハリは常にこの45度をキープ。最大50cmになる。
金属的なモノトーンがカッチョいい。
striped1 striped2
ストライプトバールフィッシュ (Striped burrfish/Chilomycterus schoepfii)
シマシマのハリセンボンはこのこ。ハリは常に立っている。
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ウェブバールフィッシュ (Web burrfish/Chilomycterus antillarum)
針が常に立っていて、大きな斑点が特徴。モンツキイシガキフグと呼ばれたりもします。
どうやら頭のツノは成魚になるとなくなるらしい?
iigakihugu1 isigakihugu2
ブリドレッドバールフィッシュ (Bridled burrrfish/Chilomycterus antennatus)
海響館にいました。アメリカ・フロリダ州南東部、バハマなど東部大西洋のサンゴ礁に住む。
ハリは固定。最大40cm程度。
southern1 southern2
サザングローブフィッシュ
オーストラリアのハリセンボン。 ハリセンボンに最も似ている種な気がします。
黄色いハリがかわゆい。

ほかにも数種類いるのですが、画像がないのでもしお持ちの方がいらしたらご一報いただけるとうれしいです。


ハリセンボンを飼育する

今までに、何度となくハリセンボンの飼育をしてきました。その失敗、成功をふまえて、思ったことをまとめてみました。

1. シンプルな設備で飼う。

ハリセンボンは、生き餌が大好物で、しかもすごい量食べるので、ゴミや糞でかなり水が汚れます。
なので、水換えや掃除が簡単な、シンプルな装備で、こまめに掃除をしてあげるほうが水質の維持がしやすいです。
ろ過はオーバーフローでも外部式でも外掛けでも、能力さえある程度あればなんでも平気なのですが、
病気にかかりやすいので、毎日良く見て体調管理をしてあげましょう。
海水魚飼育としては、初心者向けの魚ではありません。
環境次第では、頻繁な掃除と水換えとの戦いでもあります。(これができないと厳しい)
ただ病気にさえならなければ、かなり基礎体力はある魚だと思います。

2. 飼育環境

水温は、あまり低いと食が細くなるようです。大体25度~30度位をキープしてあげれば大丈夫です。
なので、冬場は必ずヒーターを入れてあげましょう。フツーの熱帯魚よりもちょっと高めの温度が好きなようですが、30度は超えないようにしてください。

水槽用のファンは、水槽のフタをあけておく必要があるので、ハリセンボンには不向きだと思います。
水槽のフタは絶対にしたほうがいいです。水鉄砲くらって、まわりじゅう塩だらけになります。

狭いところをくぐったりするのが好きなようです。飾り珊瑚などで、トンネルなんかを作ってあげてもいいと思います。
水流が穏やかなところで、転がって寝たりもします。体調が悪いのではなく、単に寝ているだけです。

ハリをたてて膨らんだ後、うまくしぼめなくなることがあります。体がひっくり返ってプカプカ浮いてたり
恐らく、ヘンなところに空気が残ってしまうからだろうと思います。
そんな時は、背中をやさしくツンツンして、何度も膨らませてはしぼんで、を繰り返してみてください。そのうち沈みます。

歯 ハリセンボンの歯

こんな歯で何にでも噛みつきます。
コード類や水温計等に注意!

3. 最初の餌付けは、結構難しいです。

お店で購入したりして、最初からクリルや乾燥エサに慣れていると大変楽なのですが、
海で採取したことかは、なかなか人工飼料をすぐは食べません。
(なんとショップでも、かたくなに何も食べずに餓死するこもいるとか。)

ハリセンボンの好物は、ヤドカリ、小さなカニ、ハゼなどの小魚、モエビ、ヒザラガイ、アサリ、ウミニナなどで、生きたまま水槽にホイっと入れると、食欲がある場合は、勢い良く食いつきます。
ヤドカリは、貝が大きい場合は口で割れないので、ペンチなどで割ったりして、中身を出してからあげてもいいです。

大好物でも、水質が悪いとまったく食べようとしません。
半月以上たっても何も食べない場合、体調が悪かったり、水質がお気に召さない可能性が高いと思います。
慣れてくると、だんだんと食べるものの種類も増えてきたり、嗜好が変わったりもします。
長期飼育するためには、栄養が偏らないように、たまには生き餌をあげることをオススメします。


4. 大変メンタルな生きものです。

機嫌がいいと、ニコニコ寄ってくるのですが、
機嫌が悪いと、近づくだけで露骨にプイっと向こうを向きます。
ツノ(頭の上のハリ数本)を立てて、怖い顔して暴れて自己主張したり、
床に転がって熟睡したり、表情豊かでとても面白いです。
怒るポちょっとした器具でも、かなりディティールにこだわりがあるようで、エアレーションの泡が荒いだけでも怒り出すことも。
気に食わないものがあると、歯で噛み割っちゃったり、油断なりません。
ハリセンが噛みそうなものは、極力水槽に入れないことをオススメします。(水温計、エアレーションの玉など)

でもね、手強いからこそ、なつくと本当に可愛いのです。
もちろん、手からでもエサをたべるようになりますよ。(噛まれないように)


5. 混泳について。

他の魚と一緒にいれた場合、動きの早い攻撃的な魚には、すぐにいじめられ、逆に弱い魚は食べてしまいます。
なので、ほかのこをいじめる、ということはあまりないような気がしますが、美味そうと思ったら容赦なくもしゃもしゃ食べてしまいます。

具体例:
・ ハゼやベラ、チョウチョウウオのたぐい ・・・・・・ たいがい翌朝には食べてしまいます。
・ メジナ等の磯の魚 ・・・・・ 小さいと食べます。でも大きいと、ヒレかじられて逆にいじめられます。
・ 無脊椎類 ・・・・・ 口に入る大きさなら大抵噛み割って食べてしまいます。エビ・カニ・貝類等
・ クマノミ等 ・・・・・ かなり大きくて気が強ければ大丈夫です。 小さいと食べます。
・ ヤッコ等 ・・・・・ 大きくて気が強ければ大丈夫かもしれませんが、私には入れる勇気が出ません。
・ ほかのフグ ・・・・ 基本的に負け負けです。シッポかじられたりしてしょぼくれます。(種類によるが)
 
穏やかで大き目なこなら、混泳は可能だと思いますが、エサ食べるのがヘタクソなので、そのへんの考慮も必要です。
でも、ハリセンボンだけ複数入れた場合は、ジャレあう程度でケンカはあまりありません。
なので複数飼育は問題ありませんが、水を汚す量が倍になることが一番大変かと思います。


ハリセンボンの病気

1.白点病

ハリセンボンは、白点病にものすごく弱いです。
オーバーフローで、殺菌灯をつけた状態の水槽で、他の魚が平気なのにハリセンボンだけ白点病にかかることがあります。
基本的に丈夫な魚なのですが、白点病におちいると、一気に体力をなくし、泳ぐ力もなくなり、目も白濁してしまいます。
体についた白点よりも、ヒレの方が白点が顕著に出ます。
放置しても良くならないことがほとんどです。徐々に餌を食べなくなり、体力がなくなり死に至りますので、早急に治療をしてください。
水が汚れると、すぐに病気になります。予防には頻繁な水換えか、ろ過能力の増強しかありません。

白点病になった場合は、私の場合はバケツにて隔離治療をします。
治療といっても、やり方はシンプル。毎日バケツの水を「全部」交換するだけです。
もちろんヒーターとエアレーションをし、バケツも真水で毎日よく洗います。
真水で洗うことにより、バケツなどに付着した白点虫は死滅します。薬を使わずに、1週間位からほぼ良くなってきます。
かなり状態が悪い場合は、水換えのたびに、ハリセンボン自体を一旦別バケツで淡水浴させ、
飼育水には薬(キュプラミン1滴)の添加をすることもあります。
治療中は、ろ過はしません。ろ材に白点虫が残ってしまっては意味がないからです。なのでバケツなのです。


2.リムフォ

白いもこもこしたものが皮膚の色々なところに付いてきます。
こちらはすぐに死に至る病気ではありませんが、頻繁な水替えなどで根気よく治してあげて下さい。
淡水浴で患部をそっとぬぐい、グリーンFゴールド浴(規定の半分の濃度)を毎日繰り返していけば良くなります。

リムフォ 体の色々なところに
リムフォができています。
リムフォ こまめな水替えで、
約1ヶ月でキレイに
治りました。
(画像提供:SASAN様)

ハリセンボンと寄生虫


・ウオノエ

ハリセンボンの口の中には、結構な確立でウオノエがついていることがあります。
後々大変なので、海でハリセンボンを採取した場合は、必ず口の中をチェックし、ウオノエがついていないこを選ぶのをおすすめします。
ウオノエは、ハリセンボンの口の中で、数週間に1度脱皮を繰り返します。
水槽の中に下の画像のようなものが落ちていたら、それはウオノエの脱皮の殻です。

ウオノエの殻

ハリセンボンに寄生していたウオノエの脱皮した殻です。

水槽内で1ヶ月に数回脱皮を繰り返し、日々どんどん大きくなります。
(画像提供:kazu様)

ウオノエは、一般的に「魚に悪影響がない」と言われています。
しかし、大きなエサを好むハリセンボンには、摂餌に邪魔になるようです。(食べこぼしまくり)
また、口からあふれんばかりに大きくなってしまうこともあるようです。

ウオノエは、口からはがすことが出来ます。
私がやった方法は以下の通りです。
  1.ハリセンボンが膨らまないように、手早く水からとりだす。
  2.ゴム手袋でハリが立たないようにしっかり持つ。
  3.口を開けた瞬間に、割り箸を口の中に入れ、開けたままで固定する。
  4.先が曲がった、尖っていないピンセットをハリセンボンの口に差込み、ウオノエをはさんで引きずり出す。
  5.グリーンFゴールド(規定の半分の量)を溶かした海水に、しばらくハリセンボンを泳がせておく。
ウオノエは案外しっかり貼り付いています。
メリメリメリッ! ズボッ! という感じではがれます。かなり気持ち悪いです。
ひとりでは作業は難しいと思います。ハリセンボンの口の力が強いので、こじ開けておくのに注意が必要です。

ウオノエ 口から取り出したウオノエ。
先の長いニッパーで
取り出されたそうです。
ウオノエ このたくさんの足で口の中にしっかり貼り付いています。
(画像提供:Y様)

参考文献 ・ タイノエとは (画像・「魚病図鑑」(緑書房)) ←クリックで別画面にて開きます。
この写真では口の上部についていますが、下に付いている場合もあります。


・ウオビル?

ウオノエ以外の寄生虫がつくケースもあります。
体力の低下につながるようでしたら、ウオノエ同様に除去をしてあげてください。


ウオビル

ハリセンボンのエラから見つかった寄生虫。
ウオビルやエラムシの仲間だと思われますが、詳細は不明。
吸血作用により宿主が貧血に陥り、徐々に衰弱死すると思われます。

採取したカレイのエラが壊死していたことから、
そこから転移したものじゃないかと思われます。

ウオビル 上記の写真と同じものです。
左右のエラの両方にいました。
ピンセットで除去。
(画像提供:SASAN様)

ハリセンボンの繁殖


近年、水族館などでは、ハリセンボンの人工繁殖に成功しています。
残念ながら私は経験がないのですが、文献などを参考にしたものを以下にまとめます。

・ 繁殖生体

1. 繁殖期に入った飼育中のハリセンボンは、互いに追いかけあう行動がみられるようになる。
2. これと前後し、雌の腹部のふくらみが著しくなる。
3. 水底に静止している雌を、複数の雄が口先で突き、雄たちが一段となって、1匹の雌を水面に押し上げていく。
4. この行動を繰り返すうち、やがて水面にしぶきをあげながら、一瞬のうちに同時に放卵・放精し、水槽内が白く濁る。
5. 産卵時刻は夜、1日1回限りで、数日おいて次回の繁殖が行われる。

 ・ 受精卵、稚魚

1. 受精後約103時間で、孵化する。全長約2.6mm。口はまだ開かず、腹部を上にして水面に浮かぶ。
2. 孵化13日後、全身にこぶ状突起がみられ、ヒレが生え揃う。全長5~8mm。
3. 孵化16日後、刺激を与えると直ちにふくらむ。全身の突起がトゲに変わっている。全長11mm。
4. 孵化50日後、成魚と同様の斑紋が背面にできはじめる。全長33mm。色と形態は成魚に似る。

・ 初期飼料

シオミズツボワムシ(動物プランクトン)、アルテミア(動物プランクトン)、シオダマリミジンコ、ボウフラ、イトミミズ等を、成長の段階に応じて与えていくそうです。
 (参考文献:「海水魚の繁殖/育ててみよう海の生きもの」 1989年 緑書房)

成長 成長

クリックで大きな画像になります。(東海大学海洋科学博物館にて撮影)